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改革の継承とは何か
〜自由、民主主義の土台としての市場経済
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▼index
□ 改革の継承とは何か
〜自由、民主主義の土台としての市場経済
□お知らせ 06年望年会 ほか
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□ 改革の継承とは何か
〜自由、民主主義の土台としての市場経済 □

 安倍政権は中韓歴訪からスタート、まずまずの安全運転といえるだろう。歴史認識
についても、持論を「封印」する形で野党の批判をかわした。北朝鮮の核実験という
「共通の懸案」を前にして、「歴史問題」を「大事の前の小事」とすることができる
だけの合理的判断を、少なくとも日中政府はできる、ということだ。こうした合理的
判断の前提となっているのは、市場経済である。日本はもとより中国も、グローバル
市場に深くコミットした「戦略的互恵関係」にある。(そこから「経熱」でさえあれ
ば「政冷」でも大丈夫だと開き直るか、それとも相互依存という事実を「資産」とし
て使いこなす戦略を持つのか、ということになる。)

 振り返ってみれば、「小泉政権は、おそらく戦後史上初めて、市場経済システムそ
のものを政治が目指すべき価値であると(暗黙に)宣言した政権だった」(小林慶一
郎「論座」10月号)といえる。それを象徴するのが、経済財政諮問会議を「改革のエ
ンジン」とする政策決定メカニズムであり、そのための権力闘争が旧経世会に象徴さ
れる族議員―派閥システム潰しであったといえよう。市場経済は単に生活を豊かにす
る手段ではない(それだけなら「カネがすべて」ということになる)、自由や民主主
義の前提である。

安倍政権における「改革の継承」とは、一言でいえば、政策決定、政権運営をこうし
た意味での市場経済の常識を前提としたものに、「後戻りできないところまで」確立
するという点にある。官邸主導とはそのことにほかならない。

安倍政権に先送りされた課題は少なくない。財政構造改革、分権改革、教育改革、格
差社会などの内政上の課題に加え、外交においても核保有国・北朝鮮をめぐる真の難
題はこれからである。これらの政策課題をめぐる論戦を、市場経済の常識を前提とし
たものとして展開できるかが、与野党の本格的攻防に問われている。

「市場経済を、豊かさを得るための『手段』と捉えるなら、市場の原則を無視したよ
うな政策(いわゆるバラマキ/引用者)を融通無碍に採用することにためらいはな
い」(前記・小林)。しかしグローバル市場ではこれは通用しないことが、九〇年代
後半の「経済敗戦」で否応なく明らかとなった。
東西冷戦の崩壊は、旧東側諸国をも組み込んだ「単一の世界市場」を歴史上初めて出
現させた。長引くデフレの本質はバブル経済崩壊の後遺症ではなく、大量の安価な労
働力を擁する中国という巨大市場が隣に誕生したことによる構造的なものである。こ
のグローバル市場に対応しうる政府の役割、そのための政府の再構築こそが「改革」
の原点である。

その点で財政再建をめぐる論議は、総裁選から組閣までの第一ラウンドでは、財政均
衡論に対して市場重視の成長シフトが鮮明となったが、参院選をにらんだ来年度予算
の攻防が第二ラウンドとなる。「市場経済を、豊かさを得るための『手段』と捉
え」、「市場の原則を無視したような政策(いわゆるバラマキ)を融通無碍に採用す
る」ことへの後戻りの要素をここで派生させるべきではない。

また一方で『政治とは生活である』というのも、市場経済を「豊かさを得るための手
段」と捉えるものではないし、ましてや市場経済に生活を対置するものでもない。わ
れわれの生活はグローバル市場を前提としている(せざるをえない)。富の源泉、蓄
積、分配のシステムが以前とは様変わりしたなかでの生活なのである。FTA(自由
貿易)のなかでさらに発展できる農林水産業とはなにか。高付加価値のモノづくり―
知価社会の時代を担う人づくりとはなにか。住民自治を競い合う自治体間競争とはな
にかetcといった視点から、言い換えればグローバル市場を前提とした生活のありよ
うから「政治とは生活である」という論戦を展開できるかが、民主党には問われるだ
ろう。

外交においても、市場経済の常識が前提になるなら経済戦略外交は急務であり、その
観点から対中をはじめとするアジア外交を展開していかなければならない。グローバ
ル市場が富の源泉であるということは、「戦争で決着をつける」ことがますます出来
にくくなる一方、ますます増大する共通の利益のなかに国家間の係争を埋め込んでい
く戦略が必要になる、ということである。例えば「領土」が解決しなければ対ロ経済
協力も進まないとか、「靖国」が解決しなければ首脳会談ができない、といった外交
は市場経済が前提になっていないと言わざるをえない(経済協力を進めながら「領土
返還」を多面的に主張し続ける戦略外交)。(同時に、破綻国家や大規模テロといっ
た「やむをえない戦争」が必要な問題も一方にある。)

北朝鮮核実験を機に、政府・与党内から出てきた「核武装」論も同様である。論理的
にいっても、日本が核武装するということと日米同盟(アメリカの核の傘)とは両立
しえない。アメリカが求める核不拡散(正義とはいい難い要素があったとしても)に
真っ向から対立して核武装する日本は、グローバル市場のプレイヤーたりうるのか。
またGDP規模がまったく非対称で、なおかつ国民の犠牲をなんとも思わない北朝鮮
と日本との間で「核抑止」は成立しえない。中国との間では核抑止は成立するかもし
れないが、日中が核開発競争を展開するシナリオと、日中がFTAを結ぶシナリオの
どちらが市場経済を前提にしたものかは明らかであろう。

「唯一の被爆国」という情緒的思考停止や、その裏返しの「独立国家としての核」武
装論は世論の一部にはあってもよいが、これを契機に政策決定の場において明確に、
わが国が核武装しない合理的判断=国益をどこに見出すのかを整理することも必要だ
ろう。それが「戦後レジュームからの船出」の第一歩になるのかもしれない。

もちろん市場経済は万能ではないし、完全無欠でもない。むしろ欠陥だらけのシステ
ムだからこそ「社会的公正とは何か」「公正なルールに基づく競争なのか」を不断に
問わなければならない。
とくにこれからは、医療に代表される今まで商品経済のカテゴリーになかった分野に
市場原理が入ってくる『市場の社会的深化』(テッサ・モーリス・スズキ)が大きな
問題となる。

しかし例えば医療に競争を導入するといっても、患者が病院を選ぶのはAスーパーを
選ぶか、Bスーパーを選ぶかということとは次元が違うし、医療関係者と患者との間
には(一般的な意味での)市場原理が成立しないほどの非対称性が存在する。一方で
これまでの規制がいわゆる「供給サイド」の保護に偏って、ユーザー(この場合は患
者)の権利保護がおろそかになっていたことも事実である。
医療などの分野に競争原理を導入するという際に、どの観点に立って公正さを担保す
るのか。そこを議論しなければならない。それは市場経済を否定することではない
し、単なる金儲けのシステムと見なすことでもなく、自由や民主主義を発展させる、
自立した主権者・健全な市民社会を発展させる「共有地」として不断に整備してい
く、そのために何をなすべきかということにほかならない。
(以下、「日本再生」330号一面へ続く)


□◆□お知らせ□◆□
【06年望年会】
恒例の「望年会」は12月7日(木)18時30分より
アルカディア市ヶ谷 5階「穂高」
会費 5000円

【「日本再生」330号(11/1発刊)】
□インタビュー 
「核保有国となった北朝鮮」 康仁徳・韓国元統一部長官
「市民自治の課題」 福嶋浩彦・我孫子市長
□一灯照隅
後上民子・前久喜市議/久野晋作・我孫子市議
□活動報告
ローカルマニフェストと議会改革  白川秀嗣・越谷市議

【第四回大会報告集】
基調提起/シンポジウム1「どうする、日本の外交赤字」
シンポジウム2「自治分権のさらなる深化とローカルマニフェスト」/資料など
一部1000円・送料150円

●松戸市議会議員選挙 11/12告示 11/19投票  
 むかさ紀子(会員) 「二期目でやることもたくさんある」

●マニフェスト大賞(地方議会)授賞式 
11月10日(金)15時から17時
毎日ホール
【詳しくはこち
ら】http://www.local-manifesto.jp/manifestoaward/award/info.html

□●□事務局より□●□
11月半ばにパソコンを更新します。データの保全には万全を尽くしますが、メルマ
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