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「がんばろう、日本!」国民協議会
http://www.ganbarou-nippon.ne.jp
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Index 
□ローカル・住民自治からの民主主義のイ ノベーション
対立と分断ではなく自治と連帯へ

●地方自治の空洞化なのか、住民自治の涵養―その集積が見えてきたのか
●ローカル・住民自治からガバナンスを問い直す

□お知らせ
◆囲む会 「民主主義とジャーナリズム」「地域包括ケアと住民自治」
◆第八回大会 6/21開催

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ローカル・住民自治からの民主主義のイノベーション
対立と分断ではなく自治と連帯へ
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●地方自治の空洞化なのか、住民自治の涵養―その集積が見えてきたのか

 四月二十六日に投票が終わった統一地方選 は、前半戦、後半戦を通じて、投票率や無投票当選にまつわる過去最低の「新記録」が続出した。
 投票率は、前半戦で十道県知事選の平均投票率が初めて50%を割ったのをはじめ、四十一道府県議 選や、十七政令市議選も過去最低となった。後半戦でも市長選の平均投票率が、過去最低だった前回二〇一一年(52・97%)を下回る50・53%。市議選は48・62%、町村長選は69・07%でいずれも過去最低となった。

 同様に深刻なのは、無投票当選が続出したことだ。無投票当選率は道府県議選が21・9%、市議選が3・6%と過去最悪を 記録。根本的な原因は、地方議員の「なり手」不足だ。今回、候補者数は道府県議選、市長選、市議選、町村長選、町村議選などで軒並み過去 最少を記録した。

 確かにこれだけを見れば、地方自治の空洞化、民主主義の根幹が揺らいでいると見える。しかし一方で着実に、ローカル からの民主主義の再構築、住民自治の涵養の集積がカタチとして見え始めてきたという「新しい現実」もある。つまり問題は、それに関わる・ 関わろうとする当事者性と関係性の如何だ、ということだ。(それぞれの取り組みについては、「日本再生」432号10面で簡単に紹介。今後順次「一灯照隅」に掲載予定。)

 今回の統一地方選は幸いにして、都知事選、大阪府知事選がないため、「国政の代理戦争」という要素を絡める余地が大 幅になくなった。それぞれの地域の問題をめぐって論戦を交わし、地域のこれからを考えて一票を投じるという、「自治の力」が試される本来 の地方選挙ということだ。「与野党対決」に注目していたのでは見えてこない、住民自治の「新しい現実」がどこまで見えてきたか、それにど のように関わり、そこから住民自治を涵養する上で生きた教訓を得ることができたのか。選挙戦の総括は、このことを外してはない。

 全般的な傾向を見れば、四年間の日常活動をマニフェスト的に規 律化し、集積してきたところ(個人、チーム)では、投票率低下のなかでも前回より得票を伸ばし、投票率低下も小幅に抑えている。
 例えば越谷では「政経セミナー」を軸に、二〇一一年の超党派マニフェストを毎年、市民参加で検証し、その集積のうえに二〇一五年マニフェストを作成した。(政経セミナーの取り組みは2014年度マニフェスト大賞を受賞。取り組みの内容は、ブックレット23を参照。)

 選挙戦では、マニフェストに賛同する議員・候補8名が共通のロゴを作成するなど、統一 的に選挙戦を展開。とりわけ、期間中二回行われた合同街頭演説会では、会派も異なる候補者が駅頭に勢ぞろい。マニフェストの三項目を協力して実現する姿を「見える化」することで、選 挙での集票も「奪い合い」ではなく、「市民参加の競い合い」の構造への転換を図った。
http://shirakawa.laccess.net/

 応援にかけつけた松本・和光市長は「議会が市民から見てつまらないのは、議論を避けるから。政経セミナーの候補は議 論を恐れない。こういう議員が増えれば、議会はおもしろくなる」と激励。子どもを抱えて参加するボランティアが、その様子をすぐにSNSで広めていく。

 結果は6名が当選(新人1名)。白川議員は投票率微減のなか、前回より得票を伸ばし、上位当選を果た した。

 さらに白川議員は、今回は「選挙を非日常にしない」をテーマに、決起集会も市民とのトーク集会とした。選挙に向けたチラシも、投票権の18歳への引き下げをテーマに、普通の市民の日常的な政治参加=自治についての鼎談、という内容で、旧来型の選挙広報 とは一線を画した。また選挙期間中も選挙事務所を設けず、日常行っている路地やスーパー 前での辻立ちに徹した。
http://shirakawa.laccess.net/wp-content/uploads/2015/04/e8d9a2263cbdd65a5e43b76a550e997b.pdf

 まさに選挙は四年に一度の「非日常」ではなく、マニフェスト的に規律化された日常活動と、住民自治を涵養していく関 係性の集積の集大成にほかならない。首都圏のユーレイと揶揄されるような地域性のなかで、はたして住民自治の涵養は可能なのか、という問 いは局外者のものでしかない。住民自治の涵養・新たな担い手が育つ場づくり―その教訓と集積が、首都圏でも可視化されつつある。

 マスコミのいう「注目の選挙区」も、住民自治の視点からは別の光景が見えてくる。八尾市長選挙は「大阪都構想をめぐ る維新との対決」と評されたが、現職・田中市長は、今回の市長選は「維新対反維新」や「大 阪都構想の行方を占うもの」ではなく、二期八年にわたって住民とともに積み重ねてきた地域分権のまちづくりや、八尾の文化や歴史を破壊す る、維新政治との「自治をかけた戦い」であると述べている。

 〇七年に「八尾マニフェスト」をかかげ、現職を破って当選以来二期八年間、四年 ごとのマニフェスト検証大会(いわゆる「決起集会」)を起点にマニフェストサイクルを回し、一昨年には三年の準備期間を経て、二十八の小学校区すべてに「まちづくり 協議会」を設立、新しいまちづくりをすすめてきた。結果は60945票(得票率61.1%)で三選。「対立を生む維新政治ではアカン、と八尾の有権者は判断した」と勝利宣言。

 五月十七日には「大阪都構想」(正確には、大阪市を廃止し特別区を設置する協定書)の賛否を問う住民投票が行われ る。人為的に対立を煽る手法で繰り広げられる「都構想」騒ぎを、生活からの民主主義―住民自治の当事者意識の芽生えにつなげることができ るか。

●住民自治を涵養する議会のイノベーションへ 対立と分断ではなく自治と連帯へ

 今統一地方選を、私たちはこう位置づけてきた。

 二〇二〇年には、二度目の東京オリンピックが予定されている。一度目のオリンピックを高度成長への入り口で迎え、そ の後の約半世紀をアジアで唯一の先進国として過ごしてきた日本は、二〇二〇年オリンピックを、アジアにおける課題先進国の姿を示すものと しして準備できるか。
 オリンピックの翌年、二〇二一年からは、いよいよ東京も人口減少に入ると予測されている。二〇一九年に予定される統 一地方選は、目前に控える「二〇二五年問題」(団塊世代が全員後期高齢者となり、医療・介護ニーズが爆発的に増大すると見込まれる)への 対応が、否応なく問われることになる。二〇一五年の統一地方選は、こうした問題を地域で話し合う場をどれだけ準備できるか、それを問うも のにしなければならない。(「日本再生」四二八号)

 各地の取り組みから見るべきは、住民自治の担い手が育つ「土づくり」としての場づくりや、住民自治を涵養するソーシャル・イノベーションに関わる実践的な教訓にほかならない。

ソーシャル・イノベーションとは、既存 の制度の外側で起きている問題、これまでの社会のあり方では解決できない問題を、当事者として解決しようとする試みといっていいだろう。 それには政治や行政だけではなく、社会企業やNPOなど多様な主体による取り組みが必要だ。そのなかで議会には、どんな場づくりが求めら れるのか。

「その時に一番大事なのは、制度の内と外を結びつけることだと、私は表現しているんです。それは先ほど代表がおっしゃっ た、普通の人たちの私的関心を公的な政策決定に結びつけていく媒介の機能です。
もう少し具体的に、政策決定をする瞬間 のことについて言うと、制度の仕組みの上で仕事をし、責任を負っている自治体政府の構成者の仕事の仕組みが一方にあり、他方には生の社会 における生活課題があります。それが一人で解決できることではない、地域の共有課題であるとすれば、自治体政府を通して解決することがふさわしいものが 多々あります。それを(個別であり固有であり、「私的」利害であるものを)、制度の世界でのルールに基づく公正な手続きを通して、一 定の解決や改善に結びつけていく。制度の外の現実と制度の中でのまっとうな制度の運用、これをつないでいくために、どこで翻訳しなければ いけないか。

つまり、これは制度の上でちゃんと解決 すべきことだから、自治体政府の責任で引き取ってこうやります、これは個人の価値観や感情に関わることで、むしろ政府が介入すべきことで はないから、地域のみなさんの中でどうにかなりませんか、というような仕分けをする。あるいは政府の側に引き取ったものにつ いて、その選択肢を示して、選び取る機会を設定する。そういうことが必要になります。
〜中略〜議会には、この結びつけ方の能力を磨いていただかないと困るわけです」(廣瀬克哉・法政大学教授 「日本再生」四二四号)

市民からすれば、こういうことだろう。政治や選挙を特別のことだと考えがちだが、日ごろのちょっとした疑問や改善は、実は行政や政治のあり方と関連していることを、最近感じて いる。地方議員に議論をしてもらうと問題点がクリアーになり、自分たちがどう動けばよいのか、理解しやすい。そういう議員を選ぼうと思う、と。

ある種の「外部目線」からの市民参加論 や「市民を巻き込む」という発想から、地域の課題にいっしょに取り組むソーシャル・イノベーターとしての「場づくり」への転換ともいえ る。

 「本来政治の活動というのは、もっといろいろな可能性があるし、イノベーションが必要だろうと思います〜略〜。個々 の議員と支援者という関係は、現状ではほとんど選挙の票と表裏一体の関係になっている。そうではなく、議会として住民と向き合って、地域 の課題を発見し、話し合い、必要なら政策にしていくというのが本来の姿で、そういうことが選挙にもつながる、というサイクルが理想的なん ですね。
 そういう意味では、マニフェストもある種のイノベーションで、ああいうものを出して実行して、できないところはどう いう理由でできないか説明する、そういうプロセスは大事です。そういうイノベーションに取り組まないと、どんな議員さんでも有権者に見放 されていきますよ、とは申し上げているんです」(新川達郎・同志社大学教授 8―9面)

 議会改革も、こうした住民自治を涵養するイノベーションとして加速化していかなければならない。
 住民自治の涵養、それはこれまでの社会のあり方ではなかなか解決できない、かつ身近なな問題について、共に考え行動 するなかから育まれる新しい当事者性と関係性だ。そこから生まれる信頼の集積は、人為的に敵を作る対立と分断の統治を乗り越える社会的連 帯、新たな人間の復興へとつながる一歩になるはずだ。八回大会では、そうした人間の復興も展望していきたい。

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第8回大会 記念シンポジウム 「住民自治の力で創る、人間の復興・地 域の再生」
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2015年6月21日(日)  13時 より17時
連合会館(旧総評会館 御茶ノ水)

タイトル  住民自治の力で創る、人間 の復興・地域の再生

1300-1400  第一部 講演
          3.11から考え る「人間の復興・地域の再生」
       立谷秀清・相馬市長 岡 田知弘・京都大学教授
1410-1700  第二部 パネル ディスカッション
      テーマ 住民自治の涵養・ 地域主体の地域再生
      パネラー
      熊谷俊人・千葉市長、松本 武洋・和光市長、立谷秀清・相馬市長 
      岡田知弘・京都大学教授、太田昇・真庭市長
      廣瀬克哉・法政大学教授 (調整中) 
1730- 懇親会

参加費  シンポジウム/2000円  懇親会/5000円

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 第26回 関西政経セミナー
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シンポジウム「地域の自治力を問う」
住民自治の涵養と地方議会の役割・地域 自主組織の底力

5月30日(土)午後1時より5時まで  終了後懇親会
エルイン京都 JR京都駅八条東口前  1階大会議室
問題提起:岩崎恭典・四日市大学教授 (兼・パネリスト)
パネリスト:山中光茂・松阪市長、隠塚 功・京都市会議員、中小路健吾・長岡京市長
     四方源太郎・京都府議、上村 崇・元京都府議 ほか

会 費:1000円 懇親会費4000 円
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 東京・戸田代表を囲む会【会員限定】
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時間 18時45分から21時(メド)
場所 「がんばろう、日本!」国民協議 会 事務所(市ヶ谷)
会費 同人 1000円  購読会員  2000円

◆第149回 民主主義とジャーナリズムの役割
5月8日(金)18時45分より
ゲストスピーカー 野中章弘・ジャーナ リスト・早稲田大学教授
(「日本再生」431号インタビュー 参照)

◆第150回 地域包括ケアと住民自治〜和光市の取り組み
5月21日(木)18時45分から
ゲストスピーカー 松本武洋・和光市長

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 政策ブックレット23 ローカル・住民自治からガバナン スを問い直す
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《内容》
●閉塞状況を打開する議会からの政策サイクル
●住民の当事者意識を涵養するローカルマニフェストの深化とは
●住民自治の涵養・地域主体の地域再生の観点から、統一地方選の問題設定を共有する
●人口減少時代の自治体と地域のあり方
●地域の課題を解決する地域の総合力ー地域自主組織の底力
(「囲む会」「政経セミナー」「総会」などの記録 全204ページ)
1部 500円(送料 80円/複数部の場合はご相談ください)
申し込み先 郵便振替00160-9-77459 「がんばろう、日本!」国民協議会 



-- 石津美知子
「がんばろう、日本!」国民協議会
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